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プラスチックフィルムの基礎知識 No.054
メタロセンポリエチレン
公開日: 2005/5/31
解説:
メタロセンポリエチレンとはメタロセン触媒を使用して重合したポリマーのことで、L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)の1種です。
メタロセン触媒は、エチレンに対する高い重合活性と活性点が均一であるという特徴を持ちます。
1980年にドイツのカミンスキー(Kaminsky)教授らによって発見されました。
従来の触媒がマルチサイト触媒と呼ばれるのに対し、シングルサイト触媒といいます。
このシングルサイト触媒によるPEは、分子量の分布が狭く各分子のコモノマー含量がほぼ等しくなっています。
これによって良好な透明性や低温ヒートシール性が得られます。
PEのほかPP、PSなどでも応用が進められていますが、現在本格的に工業化されているのはPEだけです。
メタロセンポリエチレン樹脂で製造したフイルムには、次のような特徴があげられます。
・ ブロッキングしにくい
・ すべり性がよく、ブロッキング防止パウダーを使用しなくてもよい
・ ポリエチレン臭が少ない
・ 食品への溶出成分が少ない
・ EVA10~15%並みの超低温ヒートシール性フイルムが製造できる
・ L-LDPEと同等のシール強度である
・ 耐寒性、耐衝撃性に優れている
・ ホットタック性に優れている
・ 夾雑物シール性がよい
・ 揉みに対する耐ピンホール性が良い
・ 添加剤が少なくてよいので透明性に優れたフイルムの製造が可能で、特にインフレでは透明性がよい
・ 耐圧強度・耐熱性がある
・ 薄肉化、不良率低下によるコストダウンが可能
・ 自動包装の高速化による生産性アップが可能
なお、メタロセンポリエチレンフイルムの製膜法にはインフレとTダイとがあり、それぞれ特徴があります。
現在は低温シール性に特徴をもたせたグレードが主流となっていますが、将来的には多機能なフイルムの開発が進み、低臭で耐衝撃性に優れた、レトルトが可能なメタロセンポリマーも期待されています。
Kanno'sHomePageの「食品包装基礎講座」を参考にしました。
1999年7月発行富士インパルスニュースVol.88に掲載しました。